熊本県獣医師会

本会の取り組み

One Health(ワンヘルス)

1.人と動物との共通感染症対策

動物から人、人から動物にうつる感染症を防ぐ手段を習得します。

動物から人、或いは、人から動物にうつる病気を「人と動物の共通感染症」と言い、その病原体はウイルス、細菌などです。感染を防ぐため、うがい、手洗いを励行し、くさむら、やぶに入る時には長袖長ズボンを着用し、虫刺されの予防をしましょう。

2.薬剤耐性菌対策

適正な抗菌剤の使用を目指します。

細菌感染の治療には抗菌剤が使用されていますが、抗菌剤の不適切な使用により薬が効きにくくなる薬剤耐性菌の増加が懸念されています。そのため、獣医師から処方された薬は用法用量を守って適正に使用しましょう。

3.環境保護

多様な生物が暮らせる環境を守ります。

地球上には約175万種類の生物が暮らしているとされていますが、地球温暖化や森林伐採などの影響を受け、毎年約4万種類の生物が絶滅しているという報告もあります。多種多様な生物が生きていける環境を次の世代に引き継いでいくため、公共の乗り物を使用する、屋外で出たゴミは持ち帰る等、環境にやさしい行動に努めていきましょう。

4.人と動物の共生

動物と人との関係を良くする環境づくりを考えます。

愛玩動物は私たちを幸せに過ごさせてくれる重要な伴侶であり、また、災害救助犬、警察犬、麻薬探知犬、盲導犬、聴導犬などは人のために働き、活躍してくれています。しかし、残念ながら、動物の虐待、放置、遺棄などのニュースも見聞きしてしまいます。人と動物が安心して暮らしていくために、動物の特徴を良く理解した飼い方、しつけ方を学ぶとともに、定期的なワクチン接種や健康診断も実施しましょう。

5.健康づくり

一人一人の健康づくりを考えます。

心と体を健康にすることはとても大事なことです。そのためには、愛玩動物との散歩やスポーツなども含めて、個々の体に合った運動を取り入れることが、その源と考えます。人と動植物、自然とのつながりを大切にし、みんなが心も体も元気な状態で過ごす、そんな健康維持、増進を目指しましょう。

6.環境と人、動物のより良い関係づくり

健全な環境をつくり、食の安全を守ります。

安全な水と土が健康な作物を育て、それにより健康な家畜が育ち、それらを食べることで私たちの健康が守られます。安心安全な農畜産物がこれからも提供されるよう、食べ物が作られた環境を知り、地元で取れた新鮮な食材を選びましょう。

One HealthとSDGs

SDGsとは、Sustainable Development Goals ⇒ 持続可能な開発目標

SDGsの中にワンヘルスの目標、課題が重なるところがあります。この目標、課題を達成するために、私達に何が出来るか考えてみて下さい。

狂犬病予防法

国は、1896年(明29)にこれまでの「獣類伝染病予防規則」を改正して、「獣疫予防法」を定め、獣疫の中に狂犬病が規定されると共に、獣類の中に犬が追加された。
その後、1922年(大11)に獣疫予防法を廃止して「家畜伝染病予防法」を制定し、狂犬病に感染したすべての家畜の殺処分や野犬の取締りを定めた。
また、1925年(大14)には飼い犬の予防接種を実施するなど狂犬病撲滅対策に取組んできた。これらの対策の結果、わが国の狂犬病の発生は激減して1936年(昭11)には犬3頭のみの発生で、人や他の動物には及んでいない。

ところが、第二次世界大戦末期には野犬の増加など悪条件が重なり、1944年(昭19)以降、人の狂犬病発生数も急増し、人をはじめ各種の動物にも発生が見られるようになった。このような発症による社会不安の中で、厚生・農林水産両省や日本獣医師会等の努力の結果、1950年(昭25)「狂犬病予防法」が制定された。

この法律では、飼い犬の登録、年2回の予防注射の義務づけ、狂犬病予防員の制度等が規定された。
これにより、狂犬病予防対策は大きく前進し、動物や人の発症は急減して1957年(昭32)以降わが国から狂犬病は消滅した。

一方、狂犬病予防ワクチンについては、戦前の1915年(大4)に「押田ワクチン」、1916年(大5)に「梅野ワクチン」、さらに1920年(大9)には「近藤ワクチン」が使用されていた。狂犬病予防法が施行された1950年(昭25)以降、[石炭酸不活化ワクチン]が使用され、その後「動物用狂犬病組織培養不活化ワクチン」が使用されるようになった。このワクチンは、従来の体重別の注射量(ワクチン量)に比べ僅か1mlで、かつ年1回の注射で免疫力が保持できるようになった。

この結果、1985年(昭60)同法の一部改正で、予防注射は従来の年2回から1回となった。

さらに、国の規制緩和の一環として1995年(平7年)同法の一部改正により、犬登録制度が従来の年1回登録から生涯登録となった。